第70回 松島芭蕉祭並びに全国俳句大会

第70回 松島芭蕉祭並びに全国俳句大会
結果発表 令和6年11月10日

夏井いつき選

  • 特選 第一席
    束の間を海猫と飛ぶ夏帽子
    佐川盟子(白河市)
  • 特選 第二席
    土砂降りのあとの夕映え桃匂ふ
    日下節子(大河原町)
  • 特選 第三席
    橋ひとつ先にも遺跡水の秋
    伊庭美邦(東京都)
  • 秀逸
    大仏の耳は大きい曼珠沙華
    舘健一郎(常陸太田市)
  • 秀逸
    頬ふれる春の光は一匁
    長倉美季(京都市)
  • 秀逸
    小鳥来る巨石と巨樹に綱と幣
    伊藤一男(仙台市)
  • 秀逸
    団栗に笑はれませう脚と腰
    武山平(石巻市)
  • 秀逸
    八浜菊や睡りの足らぬ女たち
    小川真理子(仙台市)
  • 入選
    初暦丸は足腰鍛錬日
    藤野尚之(登米市)
  • 入選
    小鳥屋に兎が眠る秋の風
    山田桃晃(塩竈市)
  • 入選
    屋上に夜干しのヒジャブ旱星
    大河原真青(郡山市)
  • 入選
    面舵の半裸に揺るるペンダント
    及川ななを(登米市)
  • 入選
    アーケード抜けてひとりの星祭
    平尾美智男(神戸市)
  • 入選
    稲の秋釜神さまの眼は碁石
    酒井美代子(多賀城市)
  • 入選
    大部屋に誰もゐぬ日やカーネーション
    笹川昌子(茨城県)
  • 入選
    桃すするテレビに老いし大統領
    黒河内玉枝(名取市)
  • 入選
    八月や水より抜きし手のしづく
    田中有楽(東京都)
  • 入選
    春の手を走り出しても振ってゐる
    湯屋ゆうや(大津市)
  • 入選
    四万六千日の味噌汁鹹し
    浅井鰭次(横浜市)
  • 入選
    相撲部廃部コスモスの無関心
    楽花生(赤穂市)
  • 入選
    僧堂の黙圧しくる雪安吾
    眠睡花(呉市)
  • 入選
    朝刊と帰省子運ぶ渡し舟
    永井径(南相馬市)
  • 入選
    カットスイカ幸せのハードルは低い
    えいみ(伊勢崎市)
  • 入選
    絶食の後の蜜柑や喉が熱い
    水須ゆき子(千葉県)
  • 入選
    シーサーの数え方知る夏休み
    朝霧さら(福島市)
  • 入選
    学校は正しさの箱青き踏む
    朝霧さら(福島市)
  • 入選
    鯛焼のそれもそうだといった顔
    あいだほ(福岡県)
  • 入選
    ぼんやりと授乳の眼ヒヤシンス
    葦屋蛙城(新潟市)

高野ムツオ選

  • 特選 第一席
    がしがしと絡むたてがみやませの来
    池之端モルト(市川市)
  • 特選 第二席
    露消ゆる一つの星の消ゆやうに
    小野豊(仙台市)
  • 特選 第三席
    楽譜にはかけぬ音ありシャボン玉
    丸山千代子(仙台市)
  • 秀逸
    蹠をくすぐつて星流れけり
    庄子紅子(名取市)
  • 秀逸
    馬小屋に鞍のみ残り小鳥来る
    鈴木登喜子(石巻市)
  • 秀逸
    団栗に笑はれませう脚と腰
    武山平(石巻市)
  • 秀逸
    天の川軋みだしたる自在鉤
    土見敬志郎(利府町)
  • 秀逸
    人魚へと姿を戻す海九月
    瀬川琴女(三重県)
  • 入選
    獣めく撲たる鮭も撲つ漁夫も
    加藤健一郎(青森市)
  • 入選
    盆の月照らし出したる蝦夷の貌
    加藤健一郎(青森市)
  • 入選
    死は怖し生きるも恐し夜の蝶
    石の森市朗(石巻市)
  • 入選
    蚤虱馬の尿知る老いなるぞ
    湯田一秋(会津若松市)
  • 入選
    これからのわたしを生きる椿の実
    大久保和子(柴田町)
  • 入選
    曼珠沙華彼の世の重さ支えおり
    佐藤みね(美里町)
  • 入選
    廃校に集ひては去る稲雀
    鈴木三山(角田市)
  • 入選
    一日の眼鏡はずして虫しぐれ
    鈴木登喜子(石巻市)
  • 入選
    秋夕焼蝦夷の深き闇がくる
    鎌倉道彦(奥州市)
  • 入選
    瓦礫をも楽土にせむと蟻の列
    小野豊(仙台市)
  • 入選
    風を釣り浦島草の竿撓う
    土屋遊蛍(石巻市)
  • 入選
    川音の暗さに消えし恋蛍
    土屋遊蛍(石巻市)
  • 入選
    窓に雪シーラカンスの溜息か
    佐藤成之(仙台市)
  • 入選
    秋空にひとはけの雲京の菓子
    佐藤綾泉(気仙沼市)
  • 入選
    音楽は背骨より出づ愛鳥日
    うにがわえりも(山形市)
  • 入選
    てのひらにさびしがりやの木の実落つ
    窪田ゆふ(横浜市)
  • 入選
    かたつむり肉より肉の膨らみぬ
    遠藤史都(大崎市)
  • 入選
    翅少し下げ蜻蛉の定まれり
    伊予素数(横浜市)
  • 入選
    なめらかな骨組みの船月冴ゆる
    叶安(今治市)
  • 入選
    けふの雲すべて知りたる案山子かな
    立川猫丸(東京都)

成田一子選

  • 特選 第一席
    天瓜粉母が甘えたかつたのか
    七瀬ゆきこ(松阪市)
  • 特選 第二席
    音楽は背骨より出づ愛鳥日
    うにがわえりも(山形市)
  • 特選 第三席
    学校は正しさの箱青き踏む
    朝霧さら(福島市)
  • 秀逸
    靴墨のるるると伸びて秋日和
    岡本幸治(仙台市)
  • 秀逸
    みちのくのおはぎどつしり芋嵐
    本多遊子(東京都)
  • 秀逸
    朝虹の輪の中にいて鰭ほしき
    佐藤みね(美里町)
  • 秀逸
    鶏の骨断つ裸野に家一軒
    彼方ひらく(岡山市)
  • 秀逸
    神々の体臭それが秋の雷
    池之端モルト(市川市)
  • 入選
    日輪は雲の上にて笑ひ茸
    山田桃晃(塩竈市)
  • 入選
    三陸に神の島あり鹿の声
    石山善也(多賀城市)
  • 入選
    島晴れて汀に稲架の浦戸島
    石山善也(多賀城市)
  • 入選
    海中は夜を深めて送り盆
    関根洋子(逗子市)
  • 入選
    稲の花中浜小の掛時計
    岡本幸治(仙台市)
  • 入選
    屋上に夜干しのヒジャブ旱星
    大河原真青(郡山市)
  • 入選
    蹠をくすぐつて星流れけり
    庄子紅子(名取市)
  • 入選
    一斗缶の割箸百本門火焚く
    星節子(仙台市)
  • 入選
    眼裏に鬼道の卑弥呼桃を喰ふ
    伊藤一男(仙台市)
  • 入選
    蜩や小屋に静まる放ち鶏
    髙宮義治(仙台市)
  • 入選
    豚汁鍋十一月の真ん中に
    丹羽裕子(福島市)
  • 入選
    今もなほ寝言にダモイ生身魂
    伊藤一男(仙台市)
  • 入選
    瘡蓋の裏まだ濡れて敗戦日
    土屋遊蛍(石巻市)
  • 入選
    いつさいを陸奥なる国の大西日
    堀之内久子(利府町)
  • 入選
    夫を捜す夏野に溺れかけながら
    水須ゆき子(千葉県)
  • 入選
    八歳が「わ島」を思ふ春の波
    華風(小松市)
  • 入選
    雪渓にひらりと落ちるアイラッシュ
    宮下ぼしゅん(福島県)
  • 入選
    アレッポの石鹸ふかみどりの秋思
    越智空子(東温市)
  • 入選
    抱き起こす母萩ほどの軽さかな
    萩原陽里(上尾市)
  • 入選
    はつふゆの泪に潮の甘さかな
    横縞(福岡市)

西山睦選

  • 特選 第一席
    八月や水より抜きし手のしづく
    田中有楽(東京都)
  • 特選 第二席
    木簡に防人の死や冬銀河
    叶安(今治市)
  • 特選 第三席
    見送つて取り残されし島の秋
    曽根新五郎(東京都)
  • 秀逸
    身に入むや線量計の縛る町
    兵藤康行(石巻市)
  • 秀逸
    極楽の色をたたみて枯蓮
    柏倉ヤス子(山形県)
  • 秀逸
    父の声出そうな日記曝しけり
    佐藤みね(美里町)
  • 秀逸
    竿灯の空しなやかに炙り出て
    伊藤紅扇(ひたちなか市)
  • 秀逸
    二学期や机がふたつ消えている
    鎌倉道彦(奥州市)
  • 入選
    香水の匂ふくらやみ映画館
    郡山市(髙市宏)
  • 入選
    津波来し遊覧船に月今宵
    高橋康子(横手市)
  • 入選
    夕染みの婆の居場所の豆莚
    菊地ゆき子(松島町)
  • 入選
    草を刈る線量計に触れぬやう
    宮野かほる(美里町)
  • 入選
    蜩や小屋に静まる放ち鶏
    髙宮義治(仙台市)
  • 入選
    渡し場の奥の集落霧襖
    三好なおみ(神戸市)
  • 入選
    後輪の畑に食ひ込む厄日かな
    伊庭美邦(東京都)
  • 入選
    サクサクと米研ぐ典座にも残暑
    今野勝正(松島町)
  • 入選
    湖底へと沈むレールや秋の雲
    川原友記子(仙台市)
  • 入選
    高原の霧に生まれし跳ね子馬
    土屋遊蛍(石巻市)
  • 入選
    高空に命だまりや鷹柱
    穂苅真泉(安曇野市)
  • 入選
    赤とんぼ一人足りない草野球
    渡辺柊子(塩竈市)
  • 入選
    ひとたばの藁をかまどへ早稲の飯
    舟端玉(新潟市)
  • 入選
    小鳥来る動物園の休園日
    白石美月(古賀市)
  • 入選
    鶏頭の一本陸奥の農魂碑
    浅井鰭次(横浜市)
  • 入選
    校庭の隅の土俵や鳥の恋
    露草うづら(町田市)
  • 入選
    足だけは祭囃子にのせ残業
    みつ豆(盛岡市)
  • 入選
    塩味のポップコーンや雲の峰
    紅紫あやめ(犬山市)
  • 入選
    火を川に沈め鵜飼の仕舞ひけり
    彼方ひらく(岡山市)
  • 入選
    地球いつもどこか変色して素風
    小田島渚(仙台市)

坂内佳禰選

  • 特選 第一席
    兜太句碑不戦不戦と虫すだく
    小野豊(仙台市)
  • 特選 第二席
    仏壇の桃に嬰子の指の痕
    牧静(鶴岡市)
  • 特選 第三席
    中古家を鶺鴒付きで買いにけり
    夏椿咲く(福島市)
  • 秀逸
    家持は左遷の按察使虫時雨
    伊藤一男(仙台市)
  • 秀逸
    山頂の巨石にぬんと虹の立つ
    穂積天玲(大洲市)
  • 秀逸
    鶏頭の一本陸奥の農魂碑
    浅井鰭次(横浜市)
  • 秀逸
    春の夜へペダル踏み込み縫ふ産着
    檜野 美果子(仙台市)
  • 秀逸
    黒鹿毛は二十歳露けき馬銜を噛む
    池之端モルト(市川市)
  • 入選
    みんみんの大樹の芯をまた揺する
    岡田とみ子(松島町)
  • 入選
    楽譜にはかけぬ音ありシャボン玉
    丸山千代子(仙台市)
  • 入選
    白鳥になるまで今は眠らせろ
    佐藤茂之(釜石市)
  • 入選
    頬ふれる春の光は一匁
    長倉美季(京都市)
  • 入選
    一斗缶の割箸百本門火焚く
    星節子(仙台市)
  • 入選
    かたつむり一度は殻を捨つるべし
    宮野かほる(美里町)
  • 入選
    鳴子南原穴堰や小鳥来る
    芳賀翅子(仙台市)
  • 入選
    木犀の香や放課後の美術室
    小野寺みち子(仙台市)
  • 入選
    筋トレの一つ増す負荷今日の秋
    伊藤一男(仙台市)
  • 入選
    巫女募集告げて終演里神楽
    篠沢別雨(仙台市)
  • 入選
    進まざる廃炉なれども桃熟るる
    小野豊(仙台市)
  • 入選
    政宗の山河を雁の渡りけり
    小野寺昭次(奥州市)
  • 入選
    ジャズフェスを知らせる合図虫の声
    升川枝里(仙台市)
  • 入選
    色変えぬ松遺構なる小学校
    中村すじこ(函館市)
  • 入選
    野葡萄付貸家物件ござい〼
    細葉海蘭(室蘭市)
  • 入選
    白南風や大股で入る講義棟
    千葉右白(古河市)
  • 入選
    靴十足直す玄関夏休み
    松虫姫の村人(印西市)
  • 入選
    新酒酌むアテは夕陽と仁王島
    明惟久里(東京都)
  • 入選
    血統書なきものたちへ秋の風
    檜野美果子(仙台市)
  • 入選
    鷹渡る来世は鋸を挽く仕事
    池之端モルト(市川市)

渡辺誠一郎選

  • 特選 第一席
    空蟬の己が身に降るせみしぐれ
    鈴木わかば(仙台市)
  • 特選 第二席
    塩釜や筋子どれでも選べといふ
    湯屋ゆうや(大津市)
  • 特選 第三席
    湖にまた舟の出てゆく避暑地かな
    南方日午(東京都)
  • 秀逸
    初空や嘶く神馬床を掻く
    堀ノ内和夫(奈良市)
  • 秀逸
    帰省子の校歌の川に水切りす
    菅原和子(塩竈市)
  • 秀逸
    草を刈る線量計に触れぬやう
    宮野かほる(美里町)
  • 秀逸
    夏帽を振って別れを軽くする
    大和田節子(石巻市)
  • 秀逸
    ため息を知らんぷりする秋の風
    川名まこと(仙台市)
  • 入選
    認知症賜はりてをり大昼寝
    江口昭子(多賀城市)
  • 入選
    蚊遣火や横座に父の居るやうな
    兵藤康行(石巻市)
  • 入選
    みんみんの大樹の芯をまた揺する
    岡田とみ子(松島町)
  • 入選
    倒れては地の押し返す萩の花
    岩瀬一洋(松島町)
  • 入選
    曼珠沙華雨のあとさきすぐ乾く
    山田桃晃(塩竈市)
  • 入選
    コスモスのもつれるたびに色を生む
    丸山千代子(仙台市)
  • 入選
    颱風接近歯間ブラシをていねいに
    鶴岡行馬(涌谷町)
  • 入選
    夕刊をひらきしまゝの良夜かな
    遠山典子(松島町)
  • 入選
    夏立ちぬ海の切手で出す便り
    髙橋雪子(南三陸町)
  • 入選
    良き風を得し稔り田の拡ごりぬ
    幕沢幸枝(藤沢市)
  • 入選
    春の日へ机の向きを変へにけり
    下村修(川崎市)
  • 入選
    取り落とす玉子八月十五日
    遠藤玲子(仙台市)
  • 入選
    馬小屋に鞍のみ残り小鳥来る
    鈴木登喜子(石巻市)
  • 入選
    なめくじになれば入口みつかるか
    小野道子(日立市)
  • 入選
    味噌汁を椀にたつぷり文化の日
    中井由美子(仙台市)
  • 入選
    御詠歌のひとりは秋の蛍かな
    小川真理子(仙台市)
  • 入選
    卒塔婆のぴきと割れいて夏閑か
    八島ジュン(福島市)
  • 入選
    ケ91の車輪埋める花野かな
    高山佳風(浜松市)
  • 入選
    はつふゆの泪に潮の甘さかな
    横縞(福岡市)
  • 入選
    火を川に沈め鵜飼の仕舞ひけり
    彼方ひらく(岡山市)